読みもの

2020/10/13 15:00


写真家・田尾沙織さんのエッセイ『大丈夫。今日も生きている』(赤ちゃんとママ社刊)が手元に届き、読ませていただきました。冒頭から涙で視界がぼやけて先に進めなくなりながらも、子どもが昼寝をしている間に一気に読了。不思議といつもより長く寝ていた息子。「ゆっくり読んで」と時間をくれたような気がします。

予定日まで3ヵ月半前の突然の入院。そして、わずか500gで生まれた息子さんの奏介くん。日記形式で田尾さんの心情が綴られており、刻々と変化する息子さんの容態に、こちらも「がんばって」と思わず何度も呟いていました。
どの写真にも田尾さんの祈るような愛が詰まっていて、本を握る私の手にもぎゅっと力が込もります。幾多の苦難を乗り越え、退院を間近にどんどん表情が生き生きとしてくる奏介くんの姿。「命が当たり前でない」と再確認すると同時に、赤ちゃんが「生きる」ことに全力であることを改めて感じた時間でした。私も子育て真っ只中、これから越える山はたくさんあるだろうと思います。ただそんな時、まずは命が日々あることに感謝をしたい。

実は、私自身が7ヵ月目に900gで生まれた未熟児だったこともあり、田尾さんの綴った日記に、母親の心情を重ねてもいました。私もおかげさまで随分いい大人になりましたと心の中で呟きながら。今でも時々懐かしく当時の話をする母が、孫である息子を抱くたびに命が繋がっている奇跡を感じずにはいられません。

子育て中の方だけでなく、幅広く大人にも子どもにも読んでほしい。自分の命が代々紡がれてきた大切なものであること、生きていることがどれだけの奇跡の上に成り立っているか、振り返る機会になるだろうと思います。
田尾さん、こうして「本」という形に残して共有してくださったこと、本当にありがとうございます。

『大丈夫。今日も生きている』 
写真・文/田尾沙織
赤ちゃんとママ社刊 1650円
※田尾沙織さんのインスタグラムはこちら

(tocotocoスタッフ 阿部)